尾鷲商工会議所 第一期インターン生プレゼンテーション(羽田知弘)

尾鷲商工会議所 長期実践型インターンシップ・プログラム 第一期事業報告会
日時:2012年11月2日(金) 14:00〜17:00
会場:三重県立熊野古道センター 映像ホール

 

第2部-1:第一期インターン生プレゼンテーション
羽田知弘さん(三重大学3年生/尾鷲商工会議所第一期インターン生)

はだ・ともひろ/1989年愛知県生まれ・23歳。三重大学生物資源学部共生環境学科3年生。2年時(2012年1月10日〜4月7日)に、尾鷲市内の温浴・飲食・物販施設「夢古道おわせ」でインターンを経験。今夏は尾鷲商工会議所長期実践型インターンシップ・プログラム第一期生として、尾鷲商工会議所にてインターン(2012年8月16日〜9月30日)。尾鷲市内の旧家・土井見世の邸宅を中心とした、尾鷲の地域資源を活用したマチナカ活性プランの計画書作成に取り組む。

 

3度目のインターンから見えてきたもの

みなさん、こんにちは。三重大学3年の羽田と申します。

伊東から2年越しのラブコールを受けて、尾鷲に来ました(笑)。インターン期間中は1日18時間くらい一緒にいて、そういう意味では、すごく濃厚な時間を過ごせたのかなと思っています(笑)。

 

今回、僕からは「3度目のインターンから見えてきたもの」と題してお話をさせていただきたいと思います。

僕は大学3年間のうち、あわせて2年弱の間、長期のインターンシップに取り組んで来ました。その中で見えて来たもの、そして僕のような実際にインターンに取り組む学生が、どういったことを考え、行動しているのかということも、最後にお話できればと思っています。

 

report_hada01簡単に自己紹介をしますと、愛知県津島市の出身で、もともと尾鷲市とは縁もゆかりもないんですけれども、インターンをきっかけに尾鷲に来て、こうして取り組んでいます。

大学では、三重大学生物資源学部に所属して、森林計画、例えば人工衛星から森を見て、どれくらいの山があって、何年でどれくらい成長するのか、どれくらいの木材が出て来るのかなど、ちょっと専門的なことを研究しています。

 

これまでの3度のインターン

僕は、インターンを3度経験しているんですけれども、ひとつ目はNPO法人G-NET、ふたつ目は夢古道おわせ、3つ目が尾鷲商工会議所。この3つの企業でインターンをしていました。簡単に自分自身がなぜインターンし、何をしていたのかというところをご説明させていただきます。

 

report_hada02最初のG-NETは、途中から大学を休学して、16ヶ月間のインターンに取り組みました。主な業務としては、コーディネーターとして、僕自身も学生なんですが、学生と面談し、どこでやりたいのか、なぜインターンをやりたいのか、それを通してどうなりたいのかということを聞いたり、実際に企業に行ってインターンのプロジェクトをつくったり、インターンフェアという200〜250人規模の学生が参加するイベントの企画や運営。また、企業の営業などもやっていました。

 

僕がはじめてインターンに取り組んだきっかけは、大学入学前に、浪人して予備校に通っていて、大学に受かったら、サークルに入って、バイトして、合コンして、彼女を作って…と、妄想がふくらんでいたんです。その後、大学に入学して、半年ほどして、全部やってしまった。そうすると、なんだ、大学生活ってこんなものか。自分が考えていたよりも何だか普通だったな、なんだかつまらないな、と思っていたんです。

そんな中で、会社経営者の方々と合わせていただく機会があって、例えばセミナーに参加してみたり、セミナー参加後にメールを送って、会いに行ってお話を聞かせていただいたりしていました。そうすると、その日は良いお話を聞けたなぁ、やっぱり面白い経営者は違うなぁ、なんて思っていたんですが、次の日の自分は何も変わっていないんです。次の日の自分は、聞いた話の70%は忘れている。1週間・1ヶ月経って、「あれ? 俺、何も変わってないじゃないか」と思っていることがあって、これではダメだ、実際に面白いと思う経営者・大人の元で、面白いことがしてみたいと思って、インターンを始めてみました。気付けば楽しくて、休学してまでやっていました。

 

ふたつ目の夢古道でのインターンのきっかけは、まず、大学で林業を専攻していることもあって、大学卒業後も林業・木材に関わりたいと思っていました。しかし、どんどん市場のシェアが小さくなっていくなかで、柱と床と、合板と紙くらいしか、木材が関わっていない。今の既存の木材利用のままで良いのか、ということは疑問に思っていたけれども、他に何も解決策を持っていないということで悶々としていた時に、伊東さんからお話をいただきました。夢古道の「100のありがとう風呂」の入浴木は間伐材を使っているんですが、こういった新しい木材利用の形をもっともっと模索していきたいという思いから、3ヶ月のインターンに取り組みました。

インターン期間中は、「100のありがとう風呂」の事務局や、新商品の開発──間伐材で50×50cmのフロアマットを作ったり、間伐材で数珠を作ったりしました。あとは、名古屋の東急ハンズへの出店イベント運営を責任者として担当しました。

 

今回の尾鷲商工会議所のインターンでは何をやっていたかというと、こういったインターンシップの経験を通して、自分で仕事をつくってお金を稼ぎ、その中で地域に何か影響を与えたいと思っていたものの、じゃぁ、どうしたらいいんだ、ということで悩んでいた時に、伊東さんからお話をいただいたということと、自分自身も今、ECサイトを作ろうとしていて、そいうった意味でも尾鷲に実際に住んで何か考えていけたらいいな、ということで取り組みました。

では、実際に尾鷲商工会議所でどのような事に取り組んだかということを次にお話したいと思います。

 

マチナカの地域資源を利用した企画書の作成

report_hada03 report_hada04 report_hada05 report_hada06今回、僕が尾鷲商工会議所で取り組んだのは、「マチナカの地域資源を利用した企画書の作成」ということなんですけれども、簡単に何をやったかというと、尾鷲は林業と漁業の町です。しかし、マチナカにもすごく面白い文化や風土がたくさん残っています。その中で、見世土井家という、今は人が住んでいないが、80年前に建てられたとても大きな屋敷を通して、何ができるかということを企画書として考えました。

 

まず、前提となる背景をご説明します。

尾鷲は年間400人ペースで人工が減少しています。特に、林業・漁業・農業といった1次産業従事者の減少が顕著です。例えば、林業で言うと、日本全体の話しなんですが、50年前に50万人いた林業従事者が50年経って5万人になりました。90%も減ってしまった。でも、森の森林率は変わっていない。これってヤバいよね、何とかしないといけないよねと言っているけれど、どんどん減っていっている一方である。では、どうやって一次産業従事者の減少に対してアプローチできるか、ということを企画として考えました。

 

80年前の尾鷲は、林業と漁業で栄えた町だったわけですが、地域資源が全国に認められ、産業として成立している状態であった。従事者も一定数居たし、その資源を使って売れていた。しかし、土井見世の屋敷が建ってから80年経った現在、どんどん減って行く一方なので、何が必要なのかということで、地域資源の価値を新たに創り出す、人を育てていく組織・仕組みが必要なのではないか、ということを考えました。

 

今回はあまり詳しくは説明できないんですけれども、例えば、長期実践型インターンシップや、今日もご参加いただいている地域イノベーター養成アカデミー、あるいは地域おこし協力隊など、地域に人を入れるための取り組みがどんどん増えていっている中で、田舎にU/Iターンしたいという人も増えてきている。しかしながら、それを尾鷲でやるためにはどうしたら良いかということで考えた企画なんですけれども、そういった仕組み・取り組みを使って、旧家の屋敷を中心として、例えば観光・食・伝統工芸・農業・林業・漁業といったところに人を入れて行こうという取り組みです。

 

3度目のインターンの成果と自身の変化

report_hada073度目のインターンで、またやるのかと言われ、自分自身も絶対成果を出してやるぜと思いながら取り組んだインターンだったんですけれども、結果はどうだったかというと「0点」なんです。それは何でかっていうと、企画書は出しました、だけどそれってまだ実行には移っていない。まだ計画している段階なんですね。もちろんその旧家の屋敷を立て直すには、たくさんのお金が必要ですし、時間も必要です。でも、その中で、僕が取り組んだインターンは、企画書を作成してそれを実行に移すところまでがインターンです。そういう意味では、まだ何もやっていないんです。こんな皆さんの前で「僕、0点です」というのはとても悔しいといういか、恥ずかしい思いがするんですけれども、僕のインターンはこんな感じでした。

 

report_hada08では、そんな中で、自分がどんな事を考えていたのかというと、インターンを経験した学生は殆どそうだと思うんですが、答えが分かっているものに対してはすごく反応できるようになる。それは100点が何かということがわかったら、20点のものを80点にする、そういう作業はどんどん得意になっていくと思うんですけれども、じゃぁ、100点とは何なのか、100点のためにどう仮説をたてるのか、どう検証していくのかということは、自分自身まだまだできていないな、ということ。

 

もうひとつは、「0→1を生み出す」こと。よく聞く言葉だと思うんですけれど、例えば、ソトコトやgreenz、TwitterやFacebookなど、色んなアイデアや取り組みがシェアされる時代になったんですが、それはアイデアや取り組みが評価されていることであって、それをやってどうなったのか、どういう効果があって、どういう成果が出たのかというところは、そこまで追えていないような気がするんですよね。だからこそ、0→1を生み出すことだけじゃなくて、実際にそれを通してどんな意味を出すのか、どんな成果を出すのかというところまでを求めないと、結局「いいね!」を押してもらっただけで終わってしまうんじゃないか。

 

最後は「目的達成のために手段を使い尽くす」ということなんですけれども、それなりに頑張るわけです。住込で一日中仕事をして、仕事が終わった後も尾鷲のマクドナルドに行ってずっとパソコンを触ったりしていたんですけれども、時間を投資すればいいって話でもないんですよね。目的達成のために、どんな手段を使って何をするのかという所に、とことん拘らなければいけなのかな、という風にすごく思いました。自分ができないんだったら人にお願いすればいいし、お金がなければお金を集めて他の人にやってもらえばいい、そういうことがもっとできたんじゃないかなと思っています。

 

インターンと学生の全体の話

report_hada09最後に、僕自身が実際にインターンした学生の立場と、学生なんだけど、インターンをコーディネートする立場にまわってみて、より全体感のある話をしたいなと思います。

 

まず、対学生。よくこういうインターンの営業なんかをすると、「そんな学生いるの?」ってすごい聞かれるんですよ。そんな成長意欲に飢えた学生はいるのかと。それは、います。

実際に、僕自身もG-netのインターンを通じて、200人くらいの学生と接する機会があったんですけれども、みんなそういう学生ばかりです。でもそれは就職活動をうまくやるとか、そういう学生はあまりいないんです。それよりも自分に自身がなくて、でもその状況から一歩踏み出したい、何かを変えたいという学生が多いのかなと。そういう学生と企業とのマッチングが課題なのかな、と思います。

 

ふたつめ。やっぱりインターンはプロジェクトが命だと思います。例えば、1000万円売り上げます、というプロジェクトを作って、それが600万円しか売上がなかったら、やっぱり60点だと思うんですよね。どうしても、自分達がやったことに対して、例えばインターンが終わった際に「目的は達成できなかったけど、人の暖かさに触れられました」とか、「メールの書き方や名刺の渡し方を覚えました」とかっていう感想があるんですけど、それはちょっと違うのかなと。やっぱり、60%しか達成できなかったら、60点だと思うんですよね。そこっていうのはすごく大事なのかなと思っています。

 

最後に、東京でも大阪でも名古屋でもなくて、東紀州地域にしかないものは、僕はいっぱいあると思っていて…でなきゃ2回も来ないと思うんですけどね。東京だったらITベンチャーとかいっぱいあるし、大阪でもそう。名古屋や岐阜の地域だと製造業がすごく多い。その中で、何よりこの地域というのは、地域資源との関わり無くして取り組めない場所だと思うんですよね。例えば山や海や、それを通してできた文化を通して、この地域の魅力を伝えていけるんじゃないかなと思っています。

 

長くなりましたが、これで僕の発表を終わります。ありがとうございました。

 

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